女性研究者の活躍

Women in Research Excellence

生命農学研究科で活躍する女性研究者生命農学研究科では、多くの女性研究者がその力を発揮しています

 名古屋大学大学院生命農学研究科では、環境保全、生物資源利用、持続的生物生産、基礎生物科学、バイオテクノロジーなど多岐にわたる分野で女性の研究者が活躍し、先進的な研究を進めています。このサイトではその一端をご紹介します。
 女性研究者の活躍は研究の多様性を高め、学問・科学全体の発展につながります。また、女性研究者は、女性が半数を占める本研究科の学生にとっての重要なロールモデルでもあります。多様性の向上は今後の持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩と位置づけています。

主な女性研究者とその研究内容
研究内容については をクリックしてご覧ください。

谷川 東子 准教授 
博士(農学)
人工林の持続性を高めよう

森林、とくに私たちが利用している人工林が、「どのような ”植物-土壌-土壌生物の相互作用系” を形成していて、どのような系にシフトしていこうとするのか?」を明らかにする研究、そして「永続的に森林を利用するために、人類が気をつけるべきこと&工夫できること」を抽出するための研究を展開しています。

小谷 亜由美 准教授 
博士(理学)

中川 弥智子 准教授 
博士(理学)
生命のゆりかごであり、豊かな機能をもつ森の持続性をめざして、森が、森であり続けるしくみの解明に取り組んでいます。

人類は、森の恵みなしには生存できません。例えば森によって水質が浄化されたり水量が調節されていることはご存知でしょう。また森は生き物の宝庫です。多種多様な動植物や菌類によるネットワークによって生態系の働きが生まれ、 その恩恵によって私たちの社会は支えられています。
森は一見すると静的なようですが、寿命や台風などの撹乱にともなう木の世代交代の時には、実は劇的な変化が起きています。世代交代が順調なら森はずっと存在できますが、うまくいかなければ森の働きが低下したり、場合によっては森が消失したりしてしまいます。
私たちの研究室では、森が森であり続けることができるしくみの解明に取り組んでいます。木が咲かせた花のうち、種子になって芽生えて成長し、また花を咲かせる木になる確率はほんのわずかです。花粉を運ぶ昆虫、実を食べる動物、芽生えの育つ環境にくわえて、気候変動や人類による森林利用は大きなインパクトがあります。これらの要因が絡み合いながら森の世代交代にどう影響しているかを、フィールドワークを中心とした長期観察によって解明することで、生命のゆりかごのような存在である森の将来を守っていきたいと考えています。

王 晗 助教 
博士(農学)
木材の物理学:進歩しつつ技術でその仕組み、性質、法則性を明らかにする

人類は日常生活において、木材を欠かすことはできません。木材は歴史の中で人類と共に歩んできた植物、そして貴重な材料です。しかし、その神秘的な材料を完全に理解することはできません。樹木は季節の変化や環境の位置の変動、斜面での成長などに応じて内部構造を変え、環境に適応しながら成長し続けます。これらの挑戦に適応するために内部に残留する応力や特殊な構造は、私たちがこの材料を利用する際に直面しなければならない問題です。では、これらの構造や応力は一体どこから来るのでしょうか?そして、どのようにそれらと共存していけばよいのでしょうか? 技術の進歩に伴い、人類は非破壊でより微細な構造を見ることができるようになり、さらに材料中の異なる物質の分布を把握することができます。同時に、計算能力の向上やAI技術の登場により、多くの物理プロセスをアルゴリズムでシミュレーションすることが可能となりました。現在の既存の「正しい」とされる知識にとらわれず、絶えず現行の知識を見直しつつ、新たな法則をまとめ上げることで、人類は世界の真の姿をより客観的に理解することができると考えております。「木材物理学」の研究は、このようにして人類が木材をより客観的に理解するための学問です。

山﨑 真理子 教授 
博士(農学) 博士(工学)
木材利用から未来社会を考える

人間社会の基本インフラとなる建築物。その主要材料の一つである木材は、他の建設差材料と違い、①生物材料、②工場では生産できない、③生産・利用・廃棄の時間も地球環境と連携している、④使用環境が整えば、優れた耐久性を有するという性格を持っています。
建設物は人間社会において必要不可欠ですが、一方でその在り方は地球環境の持続性と表裏一体です。使用法が適切であれば、優れた環境優位性を発揮します。木材強度学の観点から、適切な木材利用の在り方を考えています。

縣 步美 助教 
博士(農学)
植物の形の多様性を理解し、育種に応用する

私たちの研究グループでは、植物の形づくりを支える遺伝基盤を理解し、作物育種に利用することを目指した研究に取り組んでいます。イネは世界的な主要作物であり、私たちの暮らしに欠かすことのできない作物です。穀粒を利用する作物において、穂の形は収量に直結する重要な形質です。私たちは、イネとその野生種が示す穂形態の多様性を利用して、多様な形が生み出される仕組みを理解し制御することを目指しています。理想的な穂の形をデザインする方法を提案することによって、食料安定確保を実現する作物育種に貢献します。

沢田 こずえ 特任助教 
博士(農学)

仲田 麻奈 助教 
博士(農学)
作物から学ぶ根気と根性

「花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根は見えねえんだなあ」相田みつをさんの名言にあるとおり、普段は見えないけれど見えるものを支えているのが根です。植物の根系は土壌環境の変化に応答して、外部形態だけではなく、内部組織構造をも変化させ、乾燥や低肥沃などの不良環境に適応しようとします。私たちは、そのような環境でも効率良く養水分吸収ができる作物の根系構造と生理機能の解明に取り組むことで、食糧問題の解決に貢献できればと思っています。

伊藤 香純 准教授 
博士(農学)

大川 妙子 准教授 
博士(理学)
概日時計の発振機構の解明を通じて、24時間社会の健康問題の解決に貢献する。

睡眠覚醒、体温、血圧、ホルモン分泌などの生理活性は、約24時間周期で発振する生物振動体「概日時計」の制御を受けて「概日リズム」を示します。哺乳類の培養細胞において「概日時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子の転写のリズムは、RLC直列回路(抵抗、コイル、コンデンサが直列に接続された回路)の過渡現象(電源が接続された直後の電流の変化)などと同様の非常にシンプルな波形を示します。またこのリズムの周期を調節する様々な化合物が存在します。私は生物学だけでなく化学や制御工学などの分野とのコラボレーションにより概日時計の発振機構の解明を目指しています。現代の24時間社会では概日時計に逆らった生活による健康問題が多発しています。この研究を通じて問題の解決に貢献したいと考えています。

井上 直子 准教授 
博士(農学)

束村 博子 特任教授 
農学博士
生殖をコントロールする脳のしくみを解き明かし、畜産物の安定供給に貢献する

肉やミルクを安定的に生産・供給するためには、家畜を含む動物の生殖がどのようなメカニズムでコントロールされているかを解き明かし、研究成果を現場へと応用することがとても大切です。私たちは、ほ乳類の生殖の司令塔である脳の働きを明らかにするため、生理学、分子生物学、遺伝子改変動物の作製など高度な技術を駆使し、世界で注目される研究を進めています。

萩尾 華子 特任助教 
博士(農学)
魚の高次視覚系の解明と魚が飛びつく視覚刺激や餌の探索

魚の色覚や擬餌の形の認識能力などへの関心が高いものの、脳研究が不十分で視覚の理解は進んでいません。魚の視覚を解明するため、まず視覚情報が網膜から大脳に送られる経路(視覚路)を調べてきました。私たちの研究などにより、魚はもともと視覚路を2つもっていましたが、棘鰭上目の共通祖先で1つが失われ、その形質が受け継がれ、後に出現した漁業対象魚の多くも視覚路は1つである可能性が高く、魚独自の視覚路の進化を遂げたことがわかってきました。
視覚路が2つと1つの場合で機能がどのように違うのかを明らかにするため、視覚性ニューロンの活動のリアルタイムイメージングに挑戦しています!ニューロン応答が強い視覚刺激を見つけ、それらを認知して実際に飛びつくのかなどについて国際共同研究もしています。将来、魚の視認性が高い漁具や餌開発に発展させ水産業に貢献できればと思っています。また、孵化後初期の魚(仔魚)の生残率や成長率を向上させる餌の開発も目指しています。
一緒に研究を楽しみ、魚はものをどのように見ているのか、魚の成長について考えてみませんか。

池田 素子 教授 
農学博士
昆虫と昆虫ウイルスの未知なる生命機能をさぐり、生物資源としての昆虫と昆虫ウイルスの活用をめざす

私たちのグループでは、特定の昆虫を宿主とするウイルスの構造や増殖の仕組みを、分子や細胞レベルで研究し、昆虫ウイルスの新たな利用法を探求しています。ウイルスが好みとする昆虫の種類や昆虫体内の組織はどのように決定されるのか。ウイルスは昆虫にどのように病気を起こし死に至らしめるのか。昆虫はウイルスの攻撃をどのような技を使ってかわしているのか・・・。
この壮大で巧妙なドラマを繰り広げているウイルスと昆虫の遺伝子を見つけ、その機能と役割を明らかにし、昆虫とウイルスによる生命の駆け引きの仕組みを解明しつつあります。そしてこれらの研究を通して、昆虫と昆虫ウイルスの特異な生物機能を開発し、有用物質の生産や害虫防除のための技術開発などに貢献したいと考えています。

水口 智江可 准教授 
博士(農学)
昆虫の脱皮・変態のメカニズムを解明し、それを標的とした害虫防除法の開発に役立てる。

昆虫の脱皮・変態はホルモンにより制御されています。幼虫・蛹・成虫という発育段階ごとに、異なる形態が形成されますが、ホルモンによる制御機構は詳しく分かっていません。そこで、発育時段階ごとの形態形成がホルモンにより制御されるメカニズムの解明に取り組んでいます。
昆虫ホルモンと同様の活性を持つ薬剤を昆虫に投与すると、脱皮・変態に異常が生じ、その昆虫は死に至ります。すでにいくつかの薬剤が、哺乳動物には低毒性の殺虫剤として利用されています。私たちは、新たな標的分子の探索や、薬剤の詳細な作用機構解明に取り組んでいます。

Damnjanovic Jasmina 准教授 
博士(農学)
Development of enzymes and their use in sustainable biotechnological processes

My research focuses on the use of enzymes as biocatalysts in sustainable industrial processes, affordable diagnostics, and pharma. We utilize protein engineering as a strategy to enhance the natural properties of enzymes, making them more efficient, stable, and specific to the target biomolecules. I have recently developed a new technology to engineer enzymes with ultimate speed, capacity and low cost. This new technology is now being used on enzymes with diverse chemistries, including oxidases, bond-forming enzymes, and lipid-modifying enzymes.

加藤 晃代 准教授 
博士(農学)
有用タンパク質の創生・生産・利用に関する研究

酵素や抗体などの有用タンパク質はバイオ研究や産業を支える分子です。私はそのようなタンパク質を低コストで創成するための技術や、生産量を簡単に増大させるための技術を開発しています。有用タンパク質の創成においては、検査診断薬として重要なモノクローナル抗体の迅速評価・改良技術を開発しています。また、タンパク質生産量増大のためには、当研究グループで見出した「翻訳促進ペプチド」を利用した技術開発とその科学的理解を目指した研究を展開しています。

新庄 莉奈 助教 
博士(農学)

中島 史恵 助教 
博士(農学)
食品成分の未知なる力を解き明かす

植物は機能性食品成分の宝庫であり、これまでにも老化や疾病に対して予防効果のある様々な成分が取り上げられてきました。しかし、それらがどのように我々の生体で効果を発揮しているのか、分子レベルのメカニズムは未だ完全には解明されていません。私は、食品成分が生体内で代謝を受けて生成される成分に着目し、代謝物の有する生体調節機能の解明を通じて、我々の健康に貢献する研究を展開しています。

佐藤 ちひろ 教授 
博士(理学)

呉 迪 助教 
博士(農学)

RATTANAJEARAKUL Nawarat 特任助教 
Ph. D.

橋本(杉本)美海 講師 
博士(理学)
植物の環境応答、成長、植物病原菌の腫瘍形成など植物に関わる研究

植物は、どんな困難に直面しても逃げることができないため、環境に適応するための遺伝子発現やシグナル伝達が重要です。細胞レベルでは、光、乾燥、CO2濃度、栄養状態、病原菌感染、そして傷害など、さまざまなストレスを感知する受容体が存在し、それぞれのストレスに対処するメカニズムが備わっています。また、ストレスの強度に応じて成長や分裂が制御されています。私は、このような植物における精緻な分子メカニズムに興味を持ち、広範囲に研究を行っています。

BELLEGARDE Fanny 特任助教 
Ph. D.

平井 優美 客員教授 
博士(農学)
代謝のメカニズムと生理機能を理解して、植物による有用物質生産の向上を目指します

代謝は生命現象の根幹であり、巧妙かつ精緻に制御されています。特に、一次代謝産物に加え多様な特化代謝産物を作る植物の代謝とその制御は複雑です。人間は、植物代謝産物を栄養源、薬、香料などとして古来利用してきました。私たちは、植物代謝のメカニズムと生理機能を理解し、有用代謝産物をよりよく植物に作らせることを目指します。そのために、代謝産物の一斉解析技術であるメタボロミクスを駆使しています。